トップページ

スペースエイジトップ

8トラデッキを修理


主催者は8トラックデッキを入手しました。それも2台。これは通称8トラと言い、専用の8トラ
テープを使用するオーディオ装置です。スペースエイジで有名な”ウエルトロン”が多くの機種で
8トラデッキを搭載しているので、スペースエイジのテープオーディオと言えば8トラと言う感じ
がします。8トラテープがどのような物かと申しますと、テープカートリッジの中に一周3~4分
のエンドレステープが収められています。一周3~4分なので、そのままでは一般的なポピュラー
ソングが一曲しか入らないのですが、名前の通り録音トラックが8つあるのでモノラルならば8曲
ステレオなら4曲入るわけです。再生する曲(トラック)の選択は、ヘッドが上下する事により
対応します。再生中でも自由に再生トラックの移動ができるのが特徴と言えます。

さて入手したデッキですが、2台共、不具合品でした。今回この2台をまとめて修理してみました。


■ テクニクス RS-825U

まず一台目はテクニクスのデッキ(RS-825U)です。こちらは録音、再生可能なデッキです。
8トラデッキでは録音できる物は少数です。これが使用可能になれば新たに音楽ソフトを作れ
ますから有効活用への道が広がります。



まず適当なカセットをセットして動作を確認してみたところ、とりあえず動作はしました。しかし
曲が切り替わりません。そこで早速中を明けてチェックします。一般的なカセットテープレコーダー
と比べるとシンプルな構造です。テープを送る軸(キャプスタン)の裏に大きなフライホイールが
あってそれを一本のベルトで駆動しているだけです。歯車や複雑なリンク機構は全くありません。
このベルトはまだ生きています。普通この手のベルトは溶けていたりして、殆ど使えなくなって
いるものですが、これはまだ使えそうです。



さて、曲が切り替わらない理由ですが、ヘッドを支えてるピンのグリスが固着してヘッドが動かなく
なっているからでした。そこでピンを支えている軸受けを外してクリーニングをしたのですが、今一
動きが悪いです。終いにはピンにコンパウンドを付けて上下運動を繰り返したところ、何とか動く様
になりました。そこで組み付けて動作させましたがまだ不安定で、動く時と動かない時があります。
そこで軸受けを良く見てみると、根元にヒビが入っていました。



これではいくらやってもダメなはずです。軸受けはアルミ鋳物でハンダ等では付きませんし、接着
面積が小さいのでボンド等で付けてもそのうち割れてくるのは目に見えてます。そこで思い切って
この部分を作り直す事にしました。材料はジュラコンを使用します。下の写真左が加工前、右が
新たにジュラコンで作ったパーツになります。軸がφ4mmなので4.1mmのドリルで穴をあけました。



下の写真左の中心に白いパーツあり、そこから金属の軸が出ています。白いパーツが新たに作った軸受
けです。実際にはこの部分にバネが付いて、上にヘッドを押し上げる働きをします。早速動作確認をし
て見たのですが、まだ動きが悪いです。奥まで引っ込んだ状態になると、引っかかっている様な感じで
出てきません。軸受けを製作する時、ドリルを送る早さにムラが有ったためか、内径に微妙な差が出来
てしまった?様です。再度ドリルを通して見ましたが殆ど改善しなかったので、少し強めのバネに交換
してみる事にしました。下の写真右が準備したバネです。



バネを少し強い物にしたところ上下運動はスムーズになりました。それで再度組み付けて動作確認を
したところ、今度はヘッドを上下させるギアをプランジャーが送りません。下の写真で左からヘッド
をセットしたところ、ヘッドを上下させるギア(白いプラパーツ)をセットしたところ、全ての組み
付けが完了したところになります。ヘッドはバネで白いギアに押し付けられており、ギアが回転する
とギアの裏にあるモールドに押されてヘッドが上下する構造なのですが、ギアを回転させるのは
プランジャーです。この力加減が微妙で、片方を強くするともう片方が力不足になってしまう様です。



結局元のバネを伸ばしたり縮めたりして力加減を調整しました。最後にフライホイールを取り付け
ようとしたところ、製作した軸受けにフライホイールがぶつかってはまりませんでした。またまた分解
して軸受けを削ります。下の写真右が削り終わってフライホイールの取り付けが終わったところです。
これでやっと完了?と思いましたが、まだダメでした。再生すると最初の数分はいいのですが、少しず
つ再生速度が落ちてスローになってきます。原因はキャプスタンの軸受けがはめ込まれているホルダー
(先ほどの折れたアルミ鋳物と同一パーツ)が緩くなっていて、再生する内に軸受けがホルダーの奥に
沈み込み、上と下の垂直が狂ってしまうのが原因の様です。どうも最初から成型ムラが多いパーツに
当たった機種の様です。この部分まで作っていたら大変なので、軸受けにゴム系接着剤を付けて暫く
動作させておき、最も良い場所で固定させる方法を取りました。



とりあえず終了です。音質は中々いいので今後は時間を置いて様子を見る事にします。





■ コベニカ 8トラプレーヤー

2台目はコベニカ8トラプレーヤーです。こちらはAM/FMチューナーとアンプを内蔵したステレオです。
8トラデッキの部分は再生のみで残念ながら録音は出来ないのですが、デザインは素晴らしく、見事に
スペースエイジしています。こちらも早速動作確認をして見ました。チューナー、アンプはOKでしたが、
残念ながら8トラ部分は全く動作しませんでした。



こちらも中を明けて見ます。すると・・・。フライホイールは粉を吹いてさびており、ベルトは完全
に溶けています。溶けたベルトはヘラで削り取り、フライホイールも取り外してさびを落とします。
ベルトはφ90mmの物が使えました。モーターのトルクは上のテクニクスより力がある様です。



ここでヘッドの動きをチェックします。やはり全く動きません。まあ、フライホイールが長年動いて
いなかった訳ですから、ヘッドのグリスが固まっているのは当たり前という感じですね。こちらの
上下運動はラダー状のリンク機構によりヘッドを上下に動かす方式です。上下運動に係る接触部分
が小さいのでこちらはすぐに動く様になりました。構造的にはこちらの方がシンプルでいいのでは?
と思いましたが、構造上ヘッドは円運動をしますので、上下の位置によってヘッドのテープへの押し
具合が変わってしまう事になります。厳密には上のテクニクスの方が優れているのかも知れません。
下の写真(中)はドライバーを突っ込んでヘッドが上下するのを確認したところです。



こちらは殆ど問題ないだろうと思って組み立てたのですが、実際動かしてみると曲が切り替わり
ません。プランジャーに付いているバネが弱く、押し足りないためにヘッドを上下させるギアが回り
きらず、途中で止まってしまうのです。バネを引っ張って強さを調整します。押す力を少し強くして
みました。すると今度はプランジャーが引っ込みません。こちらはプランジャーが小型なため、引き
込む力が弱い様です。スプリングの微妙な力加減のバランスで動いている感じです。(またかよ)



ギアを回転させる爪の角度を調整して、スプリングを元の状態にしたところうまく動作する様に
なりました。そこでテストを兼ねて40分ぐらい動作させておきました。8トラはエンドレステープな
ので、自動でトラックを切り替えながら延々と再生します。すると・・・。音が酷く割れています。
今度は電子回路です。8トラだけでなく、ラジオでも症状が出ますからアンプ部の不良の様です。



アンプですが操作パネルのスイッチ部分にプリアンプの部分?が乗っかっており、そこからパワー
アンプにつながっていると言う面倒な構造です。さらに調べると、パワーアンプ部分には電源回路
の一部が乗っかっていました。うわ分解したくねぇ~と思いましたが、原因はすぐに分かりました。
整流用ダイオードの不良です。完全にショート状態でした。これを適当な物に交換して修理完了です。



この機種は、中に宙ぶらりんの基板が付いていました。固定はされてなく、ガムテープで巻いて
中に押し込めてありました。よく見るとマイクジャックの端子部分にかつて別の配線があった跡が
見られます。改めてパネルを見ると、マイクジャックのシールの下にヘッドフォンジャックの印刷
が読み取れます。ううむ。元々純粋なオーディオ機器だったのを、メーカー自身がカラオケ対応に
改造した物の様です。宙ぶらりんの回路はおそらく追加したマイクミキシング回路と思われます。
個人的にはヘッドフォンジャックの方がいいのですが、メーカー仕様ですし、マイクボリュームも
後付で2つも付いていて、穴埋めも必要になるなど大変なのでこのままいきます。ただ、マイク
ミキシング回路のガムテープはいただけないので熱収縮チューブに改めます。



修理が完了すると、中々いい感じです。8トラの動作もメカの不具合が無い分、こちらの方が安定して
います。ラジオのチューニングダイヤルはラジオ動作時のみ発光して浮かび上がると言う凝ったつくり
です。ただ、この機種はアンプの発熱が結構あるのが気になります。本体の裏蓋も熱でやや曲がって
いるので、将来的にクーリングファンを付けた方がいいかも知れません。まあ、今のところ長時間動作
させても問題ないですし、入手時既に裏蓋が曲がっている所を見ると、元からそう言う仕様のようです。





8トラデッキを修理トップ