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ベクタースキャンモニターの整備

前回UPしたアタリ スターウォーズをプレイではベクタースキャンタイプのモニターを使用しています。主催者は
このタイプのモニターを2台持っています(残念ながら1台は不動品)。そこで今回はこれらモニターの整備をした
いと思います。

■ ウエルズ・ガードナー モニター

まずはウエルズ・ガードナーと言うモニター。こちらのモニターは画面にやや焼けはありますが(写真では露出の
関係で映っていませんが)良好動作品。本来ならばこのまま使用して問題無いはずですが、このモニターは発売
後に保護回路のバージョンアップを繰り返していた様です。ゲームの取り説に保護回路の進捗パターンが4つも
載っています。内訳は、まず特に対策されていない最初の状態があって、次に保護基板が後付けで載ったやつ、
その次が保護基板に抵抗が追加されたやつ、最後に保護回路自体がモニター基板内に内蔵されたやつの計4つ
です。主催者が持ってるやつは保護基板は載って無いし、保護回路も内蔵されてませんから最も初期型っぽいで
す。なのでこのまま使用を続けると不具合が起こるかも知れません。




そこで取り説にある改造を行おうと思いますが、まずその前にモニターの掃除を行っておきます。ブラウン管
モニターは静電気を呼ぶのでホコリの吸着がすごいし、業務用の場合は土埃やタバコのススも結構付いてい
たりします。掃除はまず最初にシールドカバーの付いている高圧基板から確認します。カバーを開けると・・・。
砂埃が付いていますが、想像していたよりは汚れは少ない。この部分はエアブローで綺麗にします。




次は大きい方の基板。これはブラウン管の根元に付いている偏向ヨークと呼ばれるコイルを制御する基板
です。こちらもエアブローします。このモニターの基板は故障した事が無いのか、ヒューズもオリジナルっぽ
いのが付いているし、部品の交換をした痕もありません。




良くあるのが触る前までは良好だったのに触ったらヘンになった、と言うケース。メンテしたつもりが壊したと
言うやつです。主催者も気をつけていたのだが・・・。元通り組んで通電したら何かヘンになっています。画像
は映っているのですが極度のピンボケに。「オイオイわしとした事が要らんことをしたってか」と思いましたが
もう遅い。そこで怪しい点を考えると高圧部のフォーカスの配線が切れたとか?と思い、コネクタを引っ張ると
何の抵抗も無く線が外れました。古い機械を触るとまあこんなモンです。切れた配線を修理したら直りました。




さて本題の改造に入ります。改造は保護基板を作って偏向ヨーク基板に取り付けます。保護基板は取り説
に回路図が載っているし、特殊な部品は使っていないので割とラクに自作が可能です。ただ取り付けは偏向
ヨーク基板に2階建てで行いますし、変更ヨーク基板の抵抗を外してその穴に接続したりしますから、接続用
の配線は下の基板との接続位置を考慮して足を出します。




取り説にはもう一つ改造が載っています。偏向ヨーク基板の入力部と出力部に保護ダイオードを付けるの
です。入力部は過大入力の抑制用、出力部はパワートランジスタの保護用の様ですが、あまり詳しく見て
いない。




自作の保護基板をセットしました。実のところ、保護基板の横幅は市販のユニバーサル基板の幅なので
やや短いのですが、それでもまずまずの寸法に収まりました。




偏向ヨーク基板の改造が完了したのでいよいよ通電試験をしてみます。先の掃除の時は掃除後ヘンになって
直しましたが、もしこの改造に間違いや気付かない部分で断線があって基板から煙が出たりすると最悪。まさ
にやらん方が良かった、と言う事になります。それで恐る恐る電源を入れると・・・。無事映った。いや~良かっ
た。しかし逆に考えると元から映っていた物が何の変化もなく映っている訳なので、果たして効果があるのか?
はたまた改造は正しいのか?等良く分からないままなのですが。まあ保険の様なもの、と言う事でヨシとしよう。





■ アンプリフォン モニター

もう一台ある不動品のモニターがこれです。入手はこちらの方が先なのですが、結構ボロで中々映りそうに
無かったのでずっと後回しになっていました。

アンプリフォンモニターはフレームが無くブラウン管と制御基板がバラバラです。しかも制御基板は高圧部と
偏向ヨーク部の2枚に分かれています。主催者の場合、とりあえずブラウン管だけは鉄のフレームにセットし
て扱いを良くしてあるのですが、フレームのベース部分の面積が小さく、ここに偏向ヨーク基板や高圧基板を
セットするのはスペース的に厳しいです。どちらか片方でも乗れば、まだ収まりが良くなるのだが・・・。制御
基板の扱いは、モニターが動作する様になったら再度考える事にします。なお、下の写真では高圧基板は
映っておりません。




さて、ジャンクのアンプリフォンモニターですが、ブラウン管部分は焼けも少なく状態はいい方なのですが、
偏向ヨーク基板の状態はかなり悪いです。元々欠品があるのは分かっていたのですが、改めてよく見ると
欠品だらけです。こりゃ酷い。欠品以外にも基板上の半固定ボリュームが普通の抵抗の上に2階建てで付
いていたり、更に0Ω抵抗(要はジャンパー線)が一箇所焼けて接いだ痕があります。更に付いているトラ
ンジスタが図面と違っているし、基板のシルク印刷とは逆に付いている物も一つあります。(下の写真右)。
アメリカのトランジスタは日本と違いリードがEBCの並びなのですが、こんなのもあるのか?いやー正に何
じゃこりゃ状態です。ただどうもボリュームの取り付けはこれで正常?らしい。調整後の接着剤も塗られて
いるし。それから欠品している部品なのですが、脈絡無く広範囲に抜き取られています。不具合では無く
単に部品取りされた様に見えます。欠品部分は部品を実装しなければなりませんが、それならばこの際
電解コンデンサ等の部品も総取替えします。その方が見た目も良くなるし安心して使えると言う物です。




この偏向ヨーク基板はパワートランジスタ及び近辺のパーツが交換された形跡があります。なのでこの辺が
トラブルを起こしていた模様。なので現在付いているトランジスタも死んでいる可能性が高いと判断、欠品
部品以外にもパワートランジスタとそれをドライブするトランジスタも交換します。それでトランジスタの取り
付け部分とかを注意して見ると、絶縁ワッシャが変色したり欠けたりしています。なのでこのパーツをジュラ
コンのスペーサーを加工して製作、新しいトランジスタを取り付けます。なお、国内で売られている標準的な
小型絶縁ワッシャはサイズが合わず取り付け出来ませんでした。




それで欠品部品を全て実装して電源を入れて見ましたが・・・。まず映像信号を入れない状態での電源ONは
ブラウン管の高圧部分も含めて特に異常無し。2~3分放置して特に問題無い様なので、次に映像信号を入
れるとブラウン管の端に何やらモヤモヤしたものが映った。しかし10数秒でヘンな臭いと音が。うわダメだ!
まだ直っていない。焼けている部品を交換して、基板のプリントパターンを正しく繋げればそれでいいはずな
のだが・・・。

それで原因究明の為、焼けた部品を取り替えながら色々試しますが、どんどん悪くなっていく。最初の通電時
は入手時焼けていた部品がまた焼けました。つまり欠品を除く入手時と同じ状態になったのです。しかし焼け
た部品を交換して実験を繰り返すと、最初は焼けて無かった別の部品が焼けだしました。仕舞いには映像信
号を入れずに電源ONするだけで燃え出す始末。う~む部品の交換は焼けた部品はもちろんだが、焼けてい
なくてもその周りにある部品はその都度テスターで導通チェックをして不良になった物は交換したのだが・・・。




偏向ヨーク回路のどこかに不具合があり、パワートランジスタ、ドライブトランジスタが焼けてショート又は
オープンになる。次に電源を入れると、それが引き金になって他の部分まで焼けてしまう、と言う事の様で
す。だとすればこれはカット&トライは出来ず、一発勝負するしか無いと言う事です。これはキツイ。一発勝
負になるのなら、前回はあまり見ていなかった部分を含めて全体を総点検します。すると・・・。まず偏向ヨ
ークのコネクタが一本接触不良だった。下の写真左で中央にコネクタが刺さっていますが、これの青い線
が接触不良。それから焼けたトランジスタに繋がる3.3Ωの抵抗があるのですが、見た目に異常は無いの
ですが実測は100kΩ以上。




それで2回目となる次回は前にも増して怪しい部品を総取替えします。上のウエルズ・ガードナーの時は
基板の裏に保護ダイオードを取り付けました。保護ダイオードはこちらの基板にもあった方がいいらしい
ので、こちらにも取り付けます。ただパワートランジスタの裏に付けるやつは偏向ヨークからの逆起電力
に対する保護用?と思われるので、今回の様に最初からトラブっている回路に付けてもトラブルが解消
する訳では無いと思いますが。それで小物を取り替えた後、最後にパワートランジスタをネジで固定して
いると、パキン!と言うイヤな音がした。トランジスタは大型のメタル・キャン・パッケージなのですが、そ
れが音を出したのです。「オイオイまさかトランジスタの金属のフタが開いたとか?」実際トランジスタを
見ると、フタの接合部が開いている様に見える。まさか通電前から壊れるとかこんなの有りか?と思いま
すが仕方が無い。ちなみにテスターで当たって見ると、トランジスタ端子間の抵抗値を見る限り異常はあ
りません。どうしようか考えましたが、もうトランジスタの在庫はありませんし、ダメ元でトライする事にしま
す。そして恐る恐る電源を入れると、まず映像信号無しでは異常無し。とりあえず最初の状態に戻った。
次に映像信号を入れると・・・。2秒ぐらいでパチン!と言う音が。即スイッチOFF!またダメです。今回は
焼損を覚悟して最初っから電源スイッチに手を掛けてましたからね。そして基板をチェックすると、垂直
パワートランジスタの片方がショート、もう片方がオープン。道連れで他のパーツも2点ほどやられた。
う~ん何か前回と故障の仕方が違う。なぜだろう?ちなみに水平パワートランジスタはテスターで見た限
りでは無事っぽい。それから回路に入っているヒューズは全て飛んでいない。う~んパワートランジスタ
が即飛ぶなんて、よほどのショート以外ありえんと思うのだが・・・。基板は新規組み直しに近く、そうそう
いかん部分があるとは思えない。よほどのショートと言えば、パワートランジスタの固定ネジ部分(この場
合E、C、Bの内のC)が放熱器を通じて他のトランジスタと接触しているとか。偏向ヨーク基板のパワートラ
ンジスタは放熱器に付けられていますが、トランジスタと取り付けネジ間に絶縁ワッシャは使いません。
これは固定ネジを通じて電気接続される為です。しかしトランジスタと放熱板の間に絶縁マイカ板は敷き
ます。放熱器とは絶縁する必要があるのです。もし取り付けネジが僅かに傾いて固定され、放熱器に触
れていたとするとショートします。まあ実際ショートしていたとして、はたしてトランジスタが焼けるのか?
先に基板のヒューズが飛ぶだけでは?と言う気もしますが、この辺りは良く分かりません。残念ながら焼
けた垂直側のトランジスタはもう外してしまったのでショートの確認は出来ず仕舞いです。どちらにしろ
対策するに越した事はありませんから、電気接続されない方のネジに絶縁ワッシャを取り付けます。




そして焼けた垂直側パワートランジスタを交換して(パワートランジスタはもう無いので入手時に元から付い
ていたやつを使用)、ドライブトランジスタも死んでいるので交換して起動します。すると・・・。今度は映像信
号を入れてもトランジスタが焼ける感じがありません。では画面は?と思い見てみると、何やら端にモヤモヤ
した画像が映っています。最初に見た画像です。それでフライバックトランスのフォーカス調整をいじって見
ますが、特に変化無し。数分後に今度は水平側の抵抗(10Ω)が燃え出しました。水平側はパワートランジス
タを交換していない(取り付け時にパキッと音がしたやつのまま)なのです。ただドライブトランジスタは交換
しています。もう交換するパワートランジスタも無いし打つ手がありません。ここはパワートランジスタを新た
に手配して再度トライします。なお、次に手配するパワートランジスタはロット等が違う物にします。




さて手配したトランジスタが届きました。しかしだいぶテンションが下がっています。テンション下がった時に作
業すると、なんか見落としがありそうでやはり止めといたいいのでは?と思い始めます。しかしこのままでは片
付かないのでボチボチやり始めました。作業はパキッと音がしたパワートランジスタの交換です。それで映像
信号を入れて通電したのですが、画面は変わらず。端にモヤッとした画像が映るだけ。そこで仮でドライブトラン
ジスタをまた新品に換えてみます。仮と言うのは空中配線で簡易的に付けると言う事です。(前回変えたばかり
のやつをまた交換するので非常に気が滅入る)そして動作させると今までに無い画像が。今までは画面の端
でモヤッとしていたのが、画面の中心でモヤッとしています。何か良くなる傾向では?と思います。しかしすぐに
元通りの画面の端になってしまいました。その後数分間動作させていると、基板から何か熱気が感じられます。
水平側の10W1.5Ωの抵抗が発熱しているのです。ちなみに垂直側の同じ抵抗は大して発熱していません。どう
も交換したばかりのドライブトランジスタがまたまた死んだ模様。きっつ~。ドライブトランジスタはまだ在庫があ
りますが、そうホイホイ殺していたらいくらあっても足りません。それでドライブトランジスタも入手時に付いてい
たやつで使えそうな物をテスターで選別して付けて見ます。以前垂直側のパワートランジスタでやったことをドラ
イブトランジスタでやって見るのです。ちなみに垂直側のパワートランジスタはその時の物がそのまま今でも付い
ています。なお、高温になった10Wの抵抗は高温状態で抵抗値を測ったところ抵抗値も高くなっています。これ
が高抵抗のままだと抵抗も使用不可なのですが、温度が下がったら本来の抵抗値に戻りました。どうやら抵抗
は助かった様です。それで最初のドライブトランジスタで通電してみたのですが、画面は先ほどと何も変わりま
せん。モヤッとした画像が端にあるだけ。抵抗も高温になります。ここでまたまた一旦作業休止にしました。




それから2週間後にようやく腰を上げ、再考察します。「10W1.5Ωの抵抗は負荷抵抗なので、これが高温になる
のは過大な電流が流れる為だ。過大な電流が流れる理由はトランジスタが発振せず、本来偏向ヨークに流れる
電流が抵抗に流れる為では。だから画像も中心にこず、端に寄ってしまうのだ」。この様に考えました。これで考
えると負荷抵抗が発熱しない垂直側は正常動作している事になります。そこで発振状態を調べる為オシロを準
備、水平側トランジスタを思い切ってパワー、ドライブの両方を一気に新品に替えて信号を見る事にします。それ
で通電すると・・・。画像が中心に来ています。相変わらずモヤッとしていますが。それで暫く動作させておいたの
ですが、今回はずっと中心に画像が出ています。負荷抵抗も僅かに熱を持っているだけです。なんか正常動作
している気がします。なので次は画面のボケの方を新たに考えてみます。偏向ヨーク基板の方が正常だとすると
フライバックトランスから出ている配線が切れているとか(上のウエルズ・ガードナーであったやつ)。そこでフォー
カス調整から出ている線の被服をずらすとアッサリ断線を発見。




それで断線を修理して改めて通電すると、映った。コンバージョン(R、G、Bの色ずれ)が酷いけど。今回の修理
のポイント(教訓)をまとめると、トランジスタのテスターでの導通検査がいくら正常でも実際に動作させるとダメ
な場合がある。それから交換するのならセットでまとめて交換する事、それと放熱器に付けない仮付けは短時
間でも動作させてはダメだ、と言う事です。しかしようやく映ったのだが意外と感動しない。どこか心の中でまた
壊れるだろ、と思っている自分がいる。で、スターウォーズの基板を映したのはいいが何かヘン。よく見たら背景
の星が無いぞ。これはスターウォーズ基板で後からソケット化されたと思われるIC、74LS165がソケットから浮い
ていた為だった。




映ったとは言え、このままではゲームになりません。早速コンバージョン調整をします。調整はブラウン管ネック部分
にあるリングで行います。本来この調整はメーカーが準備した手順があるのですが、主催者は知りません。適当にや
っても上手くいきません。最も簡単、確実な方法はメーカーが調整した場所を探ってその場所に戻す事です。やり方は
リングを良く見て元の印を見つけ出し、その位置に持ってく事。それで調整をしたのですが、かなり良くなったものの、
まだまだ悪い。結局のところリング部分を元とは逆方向にはめ直し、更に今まで上だった方を下にしたら最も良くなり
ました。調整に長時間(2日に分けて2時間程度)掛かったのですが、調整中モニターは安定して動作していました。こ
の間は偏向ヨーク基板のランニングテストをしていたとも言えるので、もう偏向ヨーク基板の不具合は解消されたと言
えるかも。




偏向ヨーク基板がずっと安定動作する様になったので、最後の締めで基板を洗浄します。洗浄したぐらいで不具合が
出る様だと完治したとは言えません。それで基板の裏側をシンナーで洗浄、乾燥させて再度通電しました。すると画像
が出ません。基板を見ると偏向ヨーク基板のLEDが点灯したままです。これは偏向ヨーク基板が映像信号を認識して
いないと言う事なので、その辺りのパーツを確認すると、最初の方で書いた2階建ての半固定ボリュームの接触が悪
い様です。そこでボリュームを新品に交換します。それで元から付いていたボリュームの取り外しに掛かかったのです
が下の抵抗にしっかり足を絡めて取り付けられており、外すのがやや面倒だった。その時気付いたのですが、本当の
原因はボリューム自体の不良では無く、下の抵抗の基板の半田接続部にクラックが入っていたのが原因の様でした。
しかしボリュームもこの際交換しておきます。




動作が良くなったので、次はモニターを使いやすくなる様にまとめます。基板がバラバラの現状では筐体にでも組み
込まない限り、非常に扱いにくいです。理想としては高圧基板と偏向ヨーク基板をブラウン管の鉄枠に取り付けて
一体化させる事ですが、上の方に書いた様にスペース的に取り付けは厳しいです。そこで考えた結果、小型の高圧
基板をサイドに取り付けて見ました。この位置だとメンテナンスもラクですしショートの危険も回避されます。それで
動作させてみたのですが画像が揺れます。これはフライバックトランスが偏向ヨークに影響を与えている為と思われ
ます。そこで高圧基板を遠ざけて見たところ下の写真右の位置までずらすと揺れが止まりました。




ちなみに偏向ヨーク基板はブラウン管の上に置いてみましたが、こちらは特に問題無い様でした。




画像が揺れるのはフライバックトランスの磁力線がモロに偏向ヨークの方向に向いている為です。そこでウエルズ・
ガードナーの様にフライバックトランスにシールドカバーを付けます。シールドカバーはパンチングメタルを使用して
上カバーのみ製作。それでセットして先ほどと同じ位置に持って行ったのですが、まだ若干揺れます。シールドしても
完全に遮蔽するのは無理な様です。対策としては磁力線が交差する位置に高圧基板を持っていくしかありません。
それで考えると置き場所は鉄フレームのベース上しか無さそう。なので次にシールドカバーの底部分をアルミで作り
しっかり絶縁対策した上でベース上に置きます。なお、偏向ヨーク基板も取り付け用のベースをアルミで作ります。
偏向ヨーク基板は放熱板が大きく、不安定な感じですから放熱板の下も支える構造にします。アルミの支えは放熱
板の延長と考えられますから、放熱効率もアップして一石二鳥です。なお、写真では見えませんが偏向ヨーク基板
の9ピンコネクタの下部分にはコネクタ脱着時の基板のそり防止の為の支えも付けてあります。また、両方のアルミ
ベースには絶縁シートも敷いてあります。




それぞれの基板を鉄のフレームに取り付けました。なんか頭でっかちな印象ですがぐんと扱いやすいです。




さて、早速動作試験をしてみます。今まで散々トラブりましたから電源スイッチを入れる時はいまだに緊張します。
そして画像を確認すると・・・。基板の取り付けに関しては全く問題無い様で普通に動作しました。それで次に映り
具合を確認すると画面サイズが合っていない。調整が必要だ。で、そのまま画面を見ていたら被弾しました。その
時、四角い枠が一瞬出ます。普段は画面外になっていて映らない部分が映っているのです。それで先に交換した
偏向ヨーク基板のボリューム(画像サイズ)を調整しますが、水平は伸びますが垂直上部だけが潰れて伸びませ
ん。うぐぐ。実はモニターを起動して画像が映りだすと、画面上部が少し潰れていてヘンだなぁとは思っていたので
す。しかし1~2分で改善していたのでまあこんなもんか、と思っていたのです。しかしこれはどう考えても不具合が
あるっぽいです。




垂直サイズが伸びないと言う事は垂直発振の振幅サイズが足りないか、発振波形が悪いか辺りです。波形の異常
とくれば、まずコンデンサの不良とかが思い浮かびますが、今回全部新品です。そうなるとパワートランジスタか。
垂直側のパワートランジスタは上の方にある様に元から付いていたやつが生きていたので、それを使っています。
なので垂直側のパワートランジスタを2つとも新品に交換します。すると・・・。垂直サイズが改善。画像上端は潰れ
ないし、被弾時の枠も画面外に追いやれました。下の写真右は被弾時ですが画面全体がやや明るくなっています。
枠が画面外で光っている為です。




上でモニターの調整を行いましたが、ゲーム基板の方でも調整は出来ます。と言うか画面の調整はゲーム基板上
で行う方が多いです。ベクターで無い普通のゲーム基板(ラスタースキャン)でも映り具合を調整できる物もありま
すが少数で、普通はモニター側で調整します。そこへ行くとベクタースキャンはゲーム基板で調整するのが一般的
な様です。と言うのもアンプリフォンはまだ画像サイズが調整できますが、ウエルズ・ガードナーは調整箇所が殆ど
無く、高電圧調整(全体的な画面サイズが変わる)と色調整ぐらいです。なお高電圧調整ですが、低めの方がフラ
イバックトランスやその周辺に掛かる負担は少ないです。高電圧であるほどフライバックトランスの巻き線や基板
の取付け部が高温になり、徐々に絶縁低下してアーク放電が起こる可能性が上がります。別のコーナー、クーソー
CMを実践
で「フライバックトランスの端子板がレアショートで燃えてきました」と書きましたが、これは画面サイズ
が一定以上伸びなかったので電源の電圧を思い切って本来の117Vにしたのです。100V以上にするとフライバッ
クトランスがパチパチ音を立ててやばいのは分かっていたのですが、このままではいつまで経っても改善しない
のである日ヤケクソでやったらフライバックトランスの配線部分が燃え出しました。ではなるべく低目がいいのか、
と言うとそれはよく分からない。低いと性能が低下しているのは確かですからね。まあ上に書いた様にベクター
スキャンの映り具合はゲーム基板側で調整できますから、モニターの高電圧はそこそこに合わせ、ゲーム基板側
で最終調整します。それでスターウォーズ基板にある調整ポイントをまとめたのが下の図になります。




X、Yそれぞれにサイズ、位置、リニアリティがあります。リニアリティとは直線性の事で、たとえば画面にグリッド
パターン(四角マス)を映した場合に均等な四角マスが表示されるかです。これが悪いと画面に大きな円を表示
した時に卵型になってしまいます。一般的なモニター(ラスタースキャン)ではリニアリティ調整は垂直方向のみで
水平方向はありませんから、これは初めて見ました。あと、ややこしいですがラスター調整と言うのもあります。
ベクター基板をベクタースキャンモニターに映すのにもかかわらず?ラスター調整です。この調整はテスト画面で
ラスタースキャンの走査線状に画像を出し、枠内に収まる様に調整します。下の写真右はずらした状態です。




すらした状態でタイトル画面を出すと、下の写真左の様にスッチャカメッチャカなタイトル画になります。その横の
オレンジ色はデモで出てくるインフォメーション画面。こちらは文字列全体が斜めに傾くのですが、中央の”9”の
文字だけは調整に関わらず常に一定の場所にいます。これは初期シールドの数で要は設定で変えられる部分。
これは表示処理が異なるのでこの様に映るのでしょうか。ラスター調整は上の枠に収めるやつと、後はタイトル
画面とシールド数の表示が上手く収まる様にすればよさそうです。




モニターは2台共動作品になりましたのでその後は交互に入れ替えて使う事にします。それでここ暫くはウエルズ
・ガードナーを使っていたのですが、先日再度アンプリフォンにしました。で、30分ぐらいアンプリフォンを動作させ
ていたのですが、動作中に偏向ヨーク基板の放熱板を触ると何か熱いです。同様に10W1.5Ωの抵抗器も触って
見ましたがやっぱり熱い。うーむ動作に問題は無い様だが、こんなに熱かったっけ?前アンプリフォンをセットして
いたのは、たかだか2週間前。違いと言えば外気温がここのところ上昇している。それで放熱効果に変化が出た
とか?単に放熱効率の低下なら強制冷却で効果が出るはず。そこで放熱器のサイドにクーリングファンを付けて
みます。工作をするのならついでに、15ピンの接続コネクタを延長してベース部分に金具で固定する事にします。
今までは短すぎて扱いにくい上に、断線の危険もありましたからね。




それでファンを暫く動作させると・・・。放熱板の温度がみるみる低下。と言うか以前よりも低くなっています。触ると
僅かに生暖かい程度にまで下落。ファンのサイズは6cmなのですが、都合のいい事に10Wの抵抗にも風が当たり
ます。これは絶対にあった方がいいだろ、と言う事でこのまま設置します。ただ面倒なのは、ファンの電圧が12Vな
ので別途コンセントからACアダプタ経由で動作させている事。偏向ヨーク基板から電源を取れなくはないのですが
偏向ヨーク基板にはあまり手を入れたく無いです。イヤな悪夢が蘇ります。ちなみにAC100Vファンの手持ちもある
のですが動作音が大きいので却下。どっち道、別途コンセントに接続するのは同じですしね。

アンプリフォンが熱くなるならウエルズ・ガードナーはどうかと思います。ウエルズ・ガードナーはパワートランジスタ
が鉄のモニターフレームとアルミの下部シャーシーに付いています。で、暫く動作させてから触るとやっぱり熱い。
アルミはともかく鉄に付いている方は熱伝導的にどうかと思います。実際フレーム鉄板はトランジスタ周りだけが熱
くなっているので放熱効率は悪そう。もし対策をするのなら両方のパワートランジスタを外して別途アルミの放熱板
に取付け、クーリングファンで強制冷却するのがいいと思うが、工作が結構大変なのと家庭使用ではそんなに連続
稼動する訳ではありませんから今はこのままで行こう。


■


さて2台のモニターの整備が完了しましたので、ここで2台の映り具合を比べてみます。このモニターは両方共
19インチなので比べるには好都合と言えます。

まず電源を入れて起動すると、映像信号を認識すると同時に変更ヨークが働き始めます。その時から偏向ヨーク
の動作音がずっと聞こえるのですが、主催者の持っているウエルズ・ガードナーはチリチリと言う音が聞こえます。
アンプリフォンの方も聞こえるのですが、ウエルズ・ガードナーに比べるとだいぶ小さいです。次に映像を比べる
と、スターウォーズのデモ画面でインフォメーション(文字)表示の時、モニター表示がややちらつきます。上のラ
スター調整の部分です。両方のモニターがちらつきますがウエルズ・ガードナーの方が、ややちらつきが大きいで
す。これはモニターの機能差でしょうか。まあゲームのプレイ画面では気になる様なちらつきは感じないのでプレ
イ自体に影響は無いのですが。それから画質ですが、アンプリフォンの方がドットが細かいです。下の写真で左が
ウエルズ・ガードナー、右がアンプリフォンです。それから写真を見れば分かりますが、タイトル表示に違いがあり
ます。ウエルズ・ガードナーは特に異常は見られませんが、アンプリフォンは”STAR WARS”の表示で”A”の文字
の一部が突き出ています。これもラスター調整の部分なのですが、基板の調整は同一にも関わらずモニターによ
って線が短かったり長かったりする部分がある様です。これは偏向ヨーク基板の特性の差でしょうか。




デススターの溝に入ると背景が縦線表示で流れていきますが、アンプリフォンの方がドットが細かい為、綺麗
な一本線で表示されます。ウエルズ・ガードナーは縦線にドットの切れ目が入ります。これはデススター表面の
タワー(下から生える黄色いやつ)も同様です。結論を言うと、総じてアンプリフォンの方が優れている様です。
しかし画面の派手さはウエルズ・ガードナーの方が強い印象です。なんかこう、ギラギラしています。これは
ドットが大きいのと、アパーチャグリルの縦線(ドットを仕切っている縦線)の黒さのコントラストが強い為により
派手に感じるのかも。




■


アタリ スターウォーズはベクタースキャンですが、映画スターウォーズの劇中にもベクタースキャンが登場して
います。登場シーンは反乱軍のデススター攻撃の作戦会議。排気口をねらえ!と言う説明でワイヤーフレーム
のデススターがモニターに映っていますが、それがベクタースキャンだそうです。時代を考えると、この手のグラ
フィックは普通のアニメか模型を撮影してそれらしく加工した物と思われがちですが、本物のコンピューターグラ
フィックとはさすがです。気になるモニターはベクター・ジェネラル3D3I型との事ですが、情報は殆ど無く良く分か
りません。下の写真がそうらしいのですが。なお劇中ではモニター画面を撮影、更にそれを投影しているとの事。




上でウエルズ・ガードナーとアンプリフォンのドットサイズを書きましたが、これはカラーブラウン管なので中に
アパーチャグリルなりシャドーマスクなりが入っているのでドットと言う概念が出来ます。白黒モニターにはこ
れらがありませんから、綺麗な一本線が表示されるわけです。しかしカラーなのに白黒モニター並みの綺麗
な線の表示がされるベクターモニターがあるそうです。メーカーはエバンス&サザーランド社の製品らしい。
しかしこれまた情報が少なく、やっぱり良く分かりません。しかしこれでゲームを映したらどうなるのか見てみ
たいものです。




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